財政課・人事課・秘書課といった中枢の部署に異動することが、地方公務員としての出世コース
などということが、よく言われますよね?
しかし、地方公務員として出世コースに乗った人がこれらの場所にずっと止まり続けることは当然ながらありません。
気になるのは、出世コースを渡り歩く人々が、他にどのような部署を経験しキャリアアップしていくのかということですよね?
今回は、地方公務員として出世する人が経験するキャリアパスについて、僕の周りで実際に出世コースを歩んでいる人の例を参考にしながら、いくつかのモデルケースを紹介したいと思います。
キャリアパスとは、ある職位や職務に就任するために必要な業務経験とその順序、配置移動のルートの総称。噛み砕いていうと、キャリアアップの道筋です。
(エン転職ホームページから引用)
中枢系の部署
ここでいう中枢系の部署とは、財政課・人事課・秘書課、それから各部の総務課のことです。
財政課・人事課・秘書課は、だいたいどこの県庁でも総務部と呼ばれるところに属していますね。
一方で、各部に必ず1つだけ存在する総務課は、部内全体のオペレーションを担っています。
それぞれの部の予算・人事・秘書の機能を持った、いわば総務部のミニチュア版的存在と言えるでしょう。
総務部をベースに出世するパターン
総務部をベースにして出世していくパターンについて説明します。
このパターンでは、若手職員のとき、早い人だと新規採用の段階から引き抜かれて、財政課・人事課・秘書課のいずれかに配属させられることが多いです。
中堅職員になってから、これらの部署に移動したという例はほとんど聞いたことがありません。
これらの部署が担当する業務の特殊性から、若手のうちからある程度経験をせずに、幹部職になってからいきなり配属されても即戦力にならないという理由からでしょう。
キャリアパスとしては、財政課・人事課・秘書課のいずれかの課を基準にして、サンドイッチ状に出世コースを歩むのが一般的です。
つまり、財政課の例だと、次のようになります。
新規採用 → 財政課(主事・主任) → 〇〇部〇〇課(主査)
→ 財政課(主査・係長)→ 〇〇部〇〇課(課長補佐)→・・・
→財政課長 →・・・→ 総務部長
財政課の幹部は、主任・主査として財政課で過ごしていた、人事課の幹部も、主査として人事を経験していた、などというのがほとんどなのです。
多少の例外はあるものの、このように総務部の中枢系の部署をベースにしてキャリアアップしていくのが最もテッパンと言えるでしょう。
【現役職員談】県庁で本当に出世する人が行く部署はどこか?なぜ若手の時から経験させられるのか?
総務部以外の部をベースに出世するパターン
それでは、県庁では総務部以外には出世できないかと言うと、全くそんなことはありません。
当たり前の話ですが、総務部以外にも優秀な人材を配属することによって、しっかりと組織としてのバランスを保っているのです。
そして、総務部以外で出世コースを歩んでる人の代表的な受け皿となるのが、それぞれの部の総務課なのです。
キャリアパスとしては、総務部部内で出世コースを歩むときと同様に、総務課を基準にして、サンドイッチ状に出世コースを歩むのが一般的です。
たとえば、保健福祉部の例でいうと、やや単純化していますが大体次のようになります。
新規採用 → 保健福祉部〇〇課(主事)→ 保健福祉部総務課(主任)
→ 保健福祉部〇〇課(主査)→ 保健福祉部〇〇課(課長補佐)→・・・
→ 総務課長 →・・・→ 保健福祉部長
それから、商工労働部や保健福祉部などそれぞれの部をベースとしながらも、ステップアップの一環として総務部の中枢系の部署で一度経験を積んでから元の部に戻ってくるという、キャリアパスも多く見られます。
たとえば、総務部で人事業務を経験し、将来的に自分の部の人事業務を担当する、などです。
新規採用 → 保健福祉部〇〇課(主事)→総務部人事課(主任)
→・・・→保健福祉部総務課(主査【人事担当】)
いずれにしても、総務部以外の部でキャリアアップしていくパターンは、ほとんど総務課を軸にすることが多いと言えるでしょう。
中央省庁に出向
昇格して出向するパターン
県庁では、昇格するタイミングで国(中央省庁)に出向することも、キャリアアップのための一つのパターンとして考えられています。
法律上、国と地方自治体の間に上下関係は存在しませんが、実態としては、国の方が地方自治体よりも上の存在として扱われています。
「上級行政機関」である国に出向になれば、その時点で県庁を代表する職員に選ばれたと思ってもよいでしょう。
タイミングとしては主査や課長補佐に昇格するとき、年齢的には35歳から45歳くらいで出向することが多いです。
2年ほど中央省庁で実務を経験した後、県の本庁に戻ってきて主要なポストに配属される、というパターンが一般的です。
昇格しないで出向するパターン
30歳以下の主事・主任の段階で、中央省庁に転勤になるパターンもあります。
この場合、昇格して異動することをほとんどなく、「研修生」みたいな位置付けで出向になることがほとんどです。
そのため、給与面における待遇は変わりません。
しかし、直接は昇格はしないのですが、若手のうちから中央省庁に出向になったことで人材としての評価は増し、その後のキャリアアップで有利になる傾向があります。
出先の総務課
意外かもしれませんが、出先機関にも出世コースの職員がよく異動する部署があります。
県庁によって呼び方は異なりますが、出先の総務課がこれにあたるのです。
本庁の中枢系の部署や事業課の代表係から昇格して、出先の総務課に移動するというのが、出世コースを歩む人の一般的なキャリアパスとなります。
もちろん、出先に長く留まることはなく、だいたい1年〜2年の短いスパンで本庁に戻ってくることがほとんどです。
民間企業の場合だと、「出先に飛ばされたら左遷」というイメージがあるかもしれませんが、県庁では少し異なります。
ずっと本庁で出世コースを歩んでいる人も、必ず一度は昇格のタイミングなどで出先に異動になるのです。「未来の幹部候補として、県内の各エリアが抱える地域的課題を学ぶ」という名目があるためです。
出世する人とそうでないとの違いは、「すぐに本庁に戻るか」、それとも「永久に出先にいるか」だけの違いなのです。
目玉政策を所管する事業課の代表係(グループ)
財政課・人事課・秘書課・総務課といった中枢系の部署以外にも、事業課と呼ばれる部署にも出世するポストが存在します。
事業課の代表係(グループ)とは?
事業課における出世ポストとは、課内の代表係(グループ)のことです。
事業課とは、スポーツ振興・雇用対策・河川維持などの事業を直接担当する課のことです。
代表係とは、総務課のミニチュア版として、課内全体のオペレーションを担う係のことを指します。
ただし、どこの事業課でも代表係に行けば出世するというわけではありません。
目玉政策を所管する事業課、つまり、知事の肝いり政策を所管する事業家の代表係であることが重要になるのです。
総務課にステップアップするための足がかり
僕の勤めている県庁では、事業課の代表係から直接昇格することはあまりなく、総務課にステップアップするための足がかりとなることの方が多いです。
具体的なキャリアパスは、たとえば、次のようになります。
新規採用 → 保健福祉部スポーツ課〇〇事業係(主事)
→保健福祉部スポーツ課代表係(主事)→保健福祉部総務課(主任)
もちろん、事例こそ少ないですが、事業課の代表係から総務課を経ずに昇格することもあります。
いずれにしても、目玉政策を所管している事業課の代表係に配属されるようになれば、出世コースに乗ったと考えて間違いないでしょう。
民間企業派遣
民間企業派遣もまた、出世コースのひとつとして扱われます。
国(中央省庁)への出向と同じく、県庁を代表として派遣されるわけですから、当然組織から期待されている、一部の選ばれた職員しか行くことができません。
派遣先は、地元の大手企業だけではなく、全国的に有名な上場企業までと、幅広くあります。
民間企業派遣の場合、中央省庁への出向と違い、30歳以下の若手職員のうちに派遣となることが多いですね。
たしかに、派遣のタイミングで昇格することもなく、また、派遣終了後の配属先もバラバラな印象がありますが、優秀な職員は過去に一度は民間企業派遣の経験があることが多いです。
現在、僕の周りで出世コースを歩んでいる人の中にも、若手職員の時に民間企業派遣を経験している人が数多くいます。
直接の昇格には影響はないようですが、長期的なキャリアにおけるひとつの評価要素になることは間違いないと言えるでしょう。
おわりに
今回は、地方公務員として出世する人が経験するキャリアパスについて、いくつかのモデルケースを紹介しました。
実際に、地方公務員として出世コースを歩む人は、今回紹介したモデルケースを1つまたは複数組み合わせたパターンで出世することがほとんどです。
もちろん、ときには例外があるかもしれませんが、1つ確実に言えるのは、出世コースを歩んでいる人はもれなく、今回紹介した5つのポジションのどれか1つ以上を経験しているということです。
もし地方公務員として働き始めて、自分も5つのポジションのどれかに配属されるようになったら、出世コースに乗りはじめたと思っても良いでしょう。