

今回はこのような疑問について、現役県庁職員の立場から回答したいと思います。
この記事の内容
県庁職員はエリートなのかについて
県庁職員と市役所職員とではどちらがエリートかについて
県庁職員が世間で「エリート」視される理由
県庁職員の中のエリートについて
実際、僕も県庁職員になる前は、県庁職員=エリートというイメージを持ち、憧れをもってこの業界に入った人間の一人です。
この記事では、県庁職員として採用された後、少しでもイメージと現実のギャップに失望しないよう、「エリート」と言われる県庁職員の実態についてまとめてみました。
ぜひ記事の最後までじっくりと読んでみて下さい。
県庁職員はエリートなのか?
そもそも県庁職員はエリートなのかという疑問についてですが、

これは、現役の県庁職員としての正直な意見です。
エリートの定義
エリート(elite)とは、社会や集団で指導的・支配的役割を持っている層のこと
つまり、県庁の仕事はまったくエリートとしての役割を果たしてないのです。
実際は、指導的な役割よりも、調整的な役割の方がほとんどです。
なぜ指導的な役割を果たせないかというと、単純に県庁に「お金がないから」です。
お金がないために、国の交付金・補助金を民間や市町村に対してコーディネートするだけの存在になってしまうのですね。
結局、「県庁職員がエリート」っていうのは、単なる世間のイメージに過ぎないのです。
県庁職員は市役所職員よりもエリートじゃないの?

たまにこんなふうに勘違いされるのですが、実際は、県庁職員が市役所の職員よりもエリートということは決してありません。
県庁が市町村に対して命令的に何かをさせる
県庁のトップダウンで市町村を束ねて何らかの政策を実行する
このようなことは、実務の現場ではほとんどないのです。
繰り返しになりますが、県庁の役割は国と市町村をつなぐ調整的なものが多いのです。
実際に市町村の職員と仕事をしていても、県庁職員が市町村の職員から上に見られていると感じたことは一切ありません。
むしろ、働きの悪い県庁は、市役所から裏でバカにされます。
特に、県庁所在地の市役所は、県庁を見下す傾向が強いです。
県庁職員としては残念な話ですが、世間でイメージされているエリートとはほど遠いのです。
県庁職員がエリートと世間に勘違いされる理由
では、どうして県庁職員はエリートと勘違いされるのでしょうか?
まったく何もなければ、そもそも「県庁職員はエリートなのか?」という疑問すら起こらないはずですよね?
「県庁職員=エリート」というイメージを持たれやすい理由は、現役県庁職員の立場から考えてみました。
理由①「地方の中心的存在」感をかもしだしている
どこの県庁もなんとなく「地方の中心的存在」感が出ています。
これが、県庁職員=エリートというイメージを生みだすひとつの理由なのではないかと僕は考えています。
「地方の中心的存在」感は、具体的には次のような要素によって作られます。
県で一番大きい街の中心部に庁舎がある
道路標識やバス停の名前などで必ず「県庁」というワードを見かける
明治時代の近代建築や高層ビルなど、オフィスビルそのものに存在感がある
このように、都道府県の中心に存在感のあるオフィスがあるだけで、なんとなく偉そうですよね。
そこで働いている県庁職員はさぞかしエリートなんだろうって勘違いしてしまうのも自然なことです。
理由②学力試験のハードルが高い
採用における学力試験の難易度が高いことも、県庁職員がエリートと思われる理由の1つです。
難易度が高い公務員試験に合格 → 学力が高い → 頭がいい → エリート
どうやら無意識的にこのような変換がされてしまうらしいのです。
たしかに、公務員の採用試験は、その出題範囲の広さや難易度から一筋縄でいくものではありません。
公務員試験の出題科目
法律・経済・行政学などの専門試験
時事問題・判断推理・数的処理などの教養試験
論文試験
しかし、少し考えればわかるのですが、「公務員試験に合格 → エリート」というのはかなり無理のある変換です。
現実はもちろん、学力試験は採用における1つのフィルタリングにすぎません。
しっかりとした準備をすればわりと誰でも合格することができるのです。
いくら学力によるフィルタリングを強化したところで、100%エリート人材の採用を担保するものでは決してないのです。
理由③みんな県庁職員のことをよく知らない
じつは、「県庁についてよく知らない」ということこそ、県庁職員が世間からエリートと思われる一番大きな理由だと考えています。
市町村の職員とはちがい、日常生活で県庁職員と接することがほとんどありませんよね。
住民票の発行
所得証明の取得
子供の医療費助成の申請
日常的によく使う行政サービスは、ほとんど市町村の仕事です。
つまり、一般市民が普通に生活する中で関わる公務員のほとんどが、市町村の職員なのです。
一方、県庁職員はというと、日常生活の中で接することがほとんどありません。
県庁がどんな仕事をしているのかとか、どのような人が働いているのかということについて具体的なイメージが持ちにくくなっているのです。
そのため、県庁職員が本当にエリートなのかどうかは、ほとんどの人は知らないのです。
難しい採用試験を突破して頭が良さそう
県庁所在地の中心部にある、立派な庁舎で仕事している
おじいちゃん・おばあちゃんがエリートともてはやしている
こうした表面的な情報だけだと、なんとなく「県庁職員=エリート」って決めてしまいたくなる気持ちも分かります。
「県庁職員=エリート」というイメージがひとり歩きしてしまうのは、結局、世間の人が県庁職員についてあまりよく知らないからなのです。
県庁職員の中のエリートは?
県庁職員の中のエリートたち
世間が思っているほど、県庁職員がエリート集団ではないとことは、これまで説明したとおりです。
しかし、中にはエリートと呼ぶにふさわしい県庁職員がいることも事実です。
具体的にどのような人が県庁ではエリートで、どのような部署で活躍しているかということについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
大卒の県庁職員はエリートで高卒はエリートじゃないってホント?

なぜなら、県庁職員をはじめとする地方公務員の昇級に学歴は関係ないからです。
つまり、高卒の職員も4年働けば、新規採用の大卒職員とだいたい同じくらいの階級になるのです。
それから40歳くらいまでは、高卒も大卒も昇級の仕方はほとんど変わりません。
そして、その後出世するかどうかは本人の実力次第です。
ちなみに、地方公務員の採用区分に、地方上級と地方初級というのがあります。
地方公務員の試験区分
地方上級→大卒程度の学力保持者が受ける試験
地方初級→高卒程度の学力保持者が受ける試験
名前のひびき的に地方上級の方がランクが上のように聞こえますが、どちらの区分で採用されたからといって、昇級に差が出ることはありません。
エリート県庁職員になるのに必要なのは、結局は学歴よりも実力なのです。
まとめ
今回は、県庁職員=エリートというイメージについて解説しました。
この記事のまとめ
県庁の仕事は調整的なものが多く、とてもエリートの仕事とは言えない
県庁職員が市町村職員よりもエリートということはまったくない
県庁職員が世間からエリート視される理由は、県庁職員のことをよく知らないという理由が一番大きい
県庁の中のエリート層になるために必要なのは学歴ではなく実力
実態として決してエリートと呼べない県庁職員ですが、地方の就職先の中でも、給料・福利厚生などの待遇が良いことだけは間違いありません。
もし、待遇にこだわるのであれば、県庁職員はおすすめの就職先と言えるでしょう。