
受験予備校のパンフレットや県庁の採用説明会でよく聞きそうなキャッチコピーですね。
はたして本当にそうなのでしょうか?

地方公務員の仕事にはやりがいなんてない!あるのはただ、地域社会にどれだけ役に立っているかもわからない、個人プレーのチマチマとした仕事ばかりです!
これが、5年以上地方公務員を続けてきた僕の正直な感想です。
この記事では、世間一般的な「地方公務員のやりがい」について、現職公務員である僕の本音をまとめてみました。
このようなミスマッチングをなくすための手がかりにしていただければと思います。
よく言われる地方公務員のやりがい①「スケールがでかい」
地方公務員の仕事は、スケールがでかくはありません。
組織のスケールはでかいけど一人一人の仕事はチマチマしている
たしかに、ひとつの地方自治体の行政をすべて担っているため、地方公務員の組織そのものはでかいです。
しかし、だからといって、そこで働くひとりひとりの職員の仕事のスケールが大きいとは限りません。むしろ地方公務員の場合、内部規則によって個別の事務が細分化されているため、ひとりひとりの仕事のスケールは小さいのです。
こちらの記事で詳しく解説しているように、個々の事務があまりにも細分化されているため、自分がやっている作業がどういうプロジェクトのどの部分にあたるのかすらわからなくなるなんてことがよくあります。
あまりにも小さいパーツ過ぎてやりがいを実感できない
自分が取り組んでいる小さな作業が、大きなプロジェクトのパーツになっているという理由だけで「オレの仕事、スケールでけーぞ!」って思えますか?
たいていは自分が直接取り組んでいる作業を基準にしてしか、仕事のスケールの大小を判断するはずです。少なくとも、僕はそうですよ。
むしろ、少数精鋭のベンチャー企業のほうが、よっぽど一人一人に与えられる仕事の裁量が大きく、スケールのでかさを実感できるでしょう。
豊かな想像力を持っていない限り、地方公共団体の仕事のスケールのでかさを実感することはなかなかできないのです。
よく言われる地方公務員のやりがい②「多くの人と関わりながら仕事ができる」
地方公務員は多くの人と関わりながら仕事をしません。
間接的な関わりも含めれば話は別ですが、直接的に仕事で関わる人はごくわずかな人に限られてきます。
仕事のやり取りする窓口の人がしっかりと決まっているため、仕事上の関わりを持つ人はじつは少ないのです。少なくとも、一般職員のステージでは、いろんな人の利益を総合調整しながら仕事をするなんていうことはほとんどありませんよ。
他の部署も民間企業も相手にする窓口の職員は一人だけ
他の部や他の課と仕事上のやり取りをするにしても、規則で定められた自分の担当業務と 同じ担当者としか基本的には仕事のやり取りをしません。つまり、例えば、 自分の担当が決算業務だとすると、仕事上関係してくるのはおのずと他の課の決算担当者だけに限られてきてしまうのです。
民間企業とやり取りする場合も同じです。年間をとおしてずーっと同じ企業の担当の方とだけやり取りするということも珍しくありません。
上下のコミュニケーションも限られる
上司や部下として関わる人もきっちりと決まっています。
スピード感を重視するベンチャー企業のように、決定権者を集めてまとめてレクチャーなんていうことは地方公務員の職場ではめったにありません。
自分の直属の上司が課長補佐だとすると、相談窓口は一元的に課長補佐になります。直属の上司や部下を飛び越えて一つ先の職員と仕事上のコンタクトを取ることはほとんどありません(課長までくらいだったら直にやり取りしますが)。
たまに別室にいる管理職員が部下をねぎらいにふらっと執務室に立ち寄ることはありますが、仕事上は原則として「一般職員→課長補佐→課長→・・・→副知事→知事」とバトンをつないでいくことになります。
知事決済の案件を直接の上司である課長補佐や課長をすっ飛ばして、いきなり副知事とか知事とかに相談しに行ったら、秘書課からマジキチ認定されてしまいます。
仕事上、横の関係だけではなく縦の関係も固定的なのです。
よく言われる地方公務員のやりがい③「非営利組織だからこそ社会貢献を第一に考えられる」
「非営利組織だからこそ社会貢献が第一」は裏を返せば、「営利企業は社会貢献を第一に考えてない」ということになりますが、この論理がそもそもおかしいです。
営利企業の利益は社会に貢献したから生まれるもの
企業の利益は、社会に対して価値を与えたから生まれる、すなわち、社会貢献→利益という順番なのです。
企業が新しいモノやサービスを作った時、それに対して価値を感じてお金を払ってもいいと思う人がいるから利益が生まれるわけですよね。 つまり、社会に対して価値の提供が先行していなければ、まっとうな利益は生まれないのです。
営利企業が営利を追求するのは何も悪いことではありません。儲かれば儲かるほどそれだけ社会に大して役に立ってるという証拠なのですから。
もし、社会に対して価値が提供されてないのに利益が出ているのであれば、それはただの詐欺であって経済活動でもなんでもないです。
行政サービスの社会貢献度はわかりにくい
かつて行政評価の事務をちょっとだけ担当したことがあるのですが、行政の費用便益分析って、用いられる指標が複雑だし結構テキトーなんです。つまり、行政サービスはどれだけ社会にベネフィットを与えているかが正確にわかりづらいものなので、社会に貢献していない行政サービスを放置してしまう危険性が大いにあるのです。
それに対して、営利企業はどうでしょう?
「不採算事業を柔軟に見直して、利益(=社会貢献)が見込まれる事業を新たに打ち立てることができる」という意味では、むしろ営利企業の方が社会貢献しているとすらいえますね。営利企業の成果指標って、単純化するとどれだけ利益を上げられたかっていうことになるので。
つまり、営利か非営利ということを社会貢献と結びつけるのは少し無理があるのです。
個人的には、人気のない県庁のユルキャラなんかより、サイゼリアのミラノ風ドリア(300円)のほうが、よっぽど社会の役に立っていると思います。
さいごに
最後にもう一度言いますが、地方公務員の仕事そのものは決してやりがいのあるものとは言えません。仕事のやりがいを期待して地方公務員になると必ず後悔することになります。
やりがいよりも大事なこと
仕事のやりがいさえ求めなければ、地方公務員はその待遇や給料の面でとても恵まれている職業です。
では、「仕事のやりがい」と「給料・待遇」 、この両者を比べるとどちらが大事でしょうか?
仕事のやりがいだけで一生食べて行くことはできません。もし、仕事にやりがいだけを求めるのであれば、極端な話をすれば「一生ボランティアでいいべ」ってなっちゃいますよね?やはり、仕事である以上、やりがいよりも、長期的に安定的な収入を少ないストレスで稼ぐことの方が大事だと僕は思っています。
もし今、ノルマの厳しい民間企業など不安定な立場にいるのであれば、地方公務員として就職することはとても魅力的に選択肢になるのではないでしょうか?