
もしそうだとしたら、公務員に無能な職員が多いのはなぜ?

今回は、現役公務員がこのような疑問にお答えします。
この記事の内容
無能な公務員の実態
無能な公務員が多くなってしまう理由
世間から「公務員=無能」というイメージをもたれやすい理由
この記事の執筆者
キャリア5年以上の現役の県庁職員
まあまあな部署から花形部署に異動し、「優秀な公務員」と「無能な公務員」の両方と仕事をした経験あり
公務員が無能化しやすく、また、世間から「公務員は無能」というイメージを持たれるのには、明確な理由があります。
これらの理由を知り、公務員として働く上での教訓にしていただければ、幸いです。
それでは、最後までどうぞ。
公務員は無能なのか?

まずは、このことについてお答えします。

厳密にいうと、採用における学力フィルタリングがあるため、もともと無能という人はあまりいません。
それよりも、能力を発揮する機会を失って徐々に無能化していく人が多いという印象です。
理由としては、次のような公務員特有の人事システムによって、無能な職員が多くなりやすいと僕は考えています。
終身雇用
年功序列
つまり、成果主義的な評価システムがない以上、ボーダーラインギリギリの能力値を維持することこそ、
公務員という組織の中にあり続ける上で最もコスパが良い方法なのです。
もちろん、全員が無能化していくというわけではなく、いつまでも優秀なままの職員も存在します。
しかし、民間企業と比べると、人事評価のシステム上、公務員の方が無能になりやすいのは間違いないでしょう。
なぜ無能な公務員が多いのか?
なぜ、民間企業に比べて、公務員の組織が無能化しやすいのでしょうか?
このことをさらに掘り下げると、つぎの4つの理由にたどり着きます。
リストラがほぼない
無能なほど給料が高くなりやすい
優秀な公務員ほど辞めやすい
採用当初は優秀でもだんだんと無能化する人が多い
それぞれ具体的に説明していきます。
リストラがない
公務員の組織にはリストラ(人員整理)というものが実質的に存在しません。
無能な職員を強制的に辞めさせることができないのです。
もちろん、「分限免職(ぶんげんめんしょく)」と呼ばれる、民間企業のリストラみたいな制度が公務員にもあります。
分限免職とは
公務の効率性を保つために行われる処分。義務違反に対して行われる懲戒免職とは異なる。
法律に明記してある処分基準でしか行うことができず、民間企業の経営判断のように機動的に行えないというデメリットあり。
実際、毎年のように民間企業では大規模リストラが行われているというニュースを耳にしますが、
公務員の分限免職はほとんど行われていません。
必ずしもリストラは悪いものでは無い、と僕は考えています。
適度なリストラによって、組織の新陳代謝が促されるという良い効果も期待できるのです。
その点、リストラがない公務員の組織では、無能な職員が老廃物のように溜まりやすくなってしまうのですね。
無能な方が給料が高くなりやすい
これはつまり、無能な公務員の方が、ダラダラと残業することによって他よりも多く稼ぐことができる、ということです。
たしかに、優秀な職員が若くして出世すれば、管理職手当をもらうことができます。
管理職手当とは
その名のとおり、管理職になることによってもらえる手当
自治体と階級によって差があるが、月額だいたい40,000円程度〜もらえる
しかし、管理職になることで、管理職手当がもらえることと引き換えに残業代がつかなくなってしまうというデメリットがあります。
これによって何が起こるかというと、管理職員と一般職員の収入の逆転現象です。

課長補佐の管理職手当くらいはあっという間に越えてしまうのです。
特に、無能な公務員に限って、普通に勤務時間内に処理できてしまうような仕事をいつまでもダラダラとやり続ける傾向があるので、管理職手当超えは楽勝ですね。
残念なことに、いつまでも出世できない無能な職員の方が給料が高くなるような理不尽なシステムになっているのです。
優秀な公務員ほど辞めやすい
公務員は、優秀な職員ほど辞めやすい仕組みになっています。
優秀な公務員ばかりが辞めてしまうと当然、組織全体で無能な公務員の割合は大きくなってしまいますよね。
仕事を頑張らなくてもリストラの恐怖とはほぼ無縁
頑張って出世しなくても、ただ長生きしていれば、たまにダラダラと残業するだけで管理職手当分くらいはわりと簡単に稼げちゃう
使い勝手のよい優秀な職員ほど、キツい部署に回される
このように、公務員の人事制度は優秀な職員が損をし、無能な職員が得するように出来ています。
この事実に気づいてしまったとき、優秀な公務員が取れる合理的な選択肢は次の2つです。
- 公務員をやめる
- 自分も無能化する
若いうちにこの事実に気づいた職員の多くは、「公務員をやめる」という選択をすることが多いです。

公務員の世界にどっぷり浸かってしまい、自らの市場価値が完全になくなってしまう前に転職してしまおうというのですね。
優秀な公務員が辞めてしまうのは、ごく自然なことなのです。
採用当初は優秀でもだんだんと無能化していく人が多い
一方、優秀な公務員が損をする事実に気づきながらも、「公務員を辞める」というアクションに踏み切れない職員もいます。
そこで、彼らが取る手段は、自ら無能化することです。
意識しているかどうかは別として、自らの能力をダウングレードするのです。
つまり、優秀なパフォーマンスを発揮して出世することに何のメリットもないから、決められた勤務時間の中で与えられた仕事だけを淡々とこなすようになるのです。
超実力主義の民間企業と違い、公務員の場合、若手職員がいくら仕事を頑張っても無能な老人(50代の主査)の年収に決して追いつくことができません。
追いつくことができないどころか、新卒で採用されてから最初の10年近くは、無能な老人の半分以下の年収しかもらえないのです。
このような理不尽な現実に抵抗するための有効な手段は、自らも「無能になる」ことです。
経済的利益だけ考えると、「無能になる」ことが最もコスパが良いのですね。
なぜ世間から「公務員=無能」というイメージを持たれるのか?
たしかに、公務員に無能な人材が多いのは事実です。
でもそれは、僕が県庁職員として働き、内部事情を見てきたからこそ知り得た事実であって、一般的に誰もが知っていることではありません。
それにもかかわらず、なぜ、世間からは「公務員=無能」というイメージを持たれやすいのでしょうか?
無能な公務員のほうが目立つ
一番の理由は、優秀な職員よりも無能な公務員の方が目立つから、だと考えています。
つまり、優秀な公務員と無能な公務員の間ではざっくりとした役割分担ができていて、市民の目に触れるのはほとんど無能な公務員なのです。
優秀な公務員の役割 → 組織全体のオペレーションに関わる内部管理的業務
無能な公務員の役割 → 行政サービスの提供に直接関わる窓口業務
これは県庁だけではなく、窓口業務のウエイトが多いと言われる市役所にも当てはまるでしょう。
ハッキリ言って、市民と直接やり取りをする窓口業務の方が、機械的・マニュアル的で簡単です。
誰でも出来てしまうため、重要な任務を任せることの出来ない無能な職員を配置するのが組織にとってもっとも効率的な人材配置なのです。

もちろん、優秀な公務員もキャリアパスの過程で窓口業務を経験することもあるでしょう。
しかし、市民をイラつかせるのはたいてい、窓口業務に長くとどまり続けている、コミュ障で無能な職員なのです。
まとめ
今回は、「無能な公務員」というテーマを中心に解説しました。
この記事のまとめ
公務員はもともと無能というよりも、だんだんと無能化していく人が多い
公務員に無能な人材が多くなるのは、リストラがほぼなく、無能な方が給料が高くなりがちな中、優秀な公務員が辞めるか、もしくは、無能化してしまうからである
世間から「公務員=無能」というイメージを持たれやすいのは、無能な公務員の方が市民の目に触れやすいから
公務員には無能な人材が多く、無能でもクビになりません。
これはつまり、民間企業に比べて、激しい競争にさらされることが少ないということを意味します。
個人の働きやすさという点からは、間違いなく公務員の方が働きやすいと言えるでしょう。