

今回は、この理由について、一般的に「安泰な仕事」かどうかを判断するときに用いられる、4つの基準にしたがって解説したいと思います。
この記事の内容
「安泰な仕事」の定義
公務員がこれからも「安泰な仕事」と言える理由
この記事の執筆者
キャリア5年以上の現役の地方公務員
「安泰な仕事」とは?

公務員が安泰かどうかを判断する前に、
まず、「安泰な仕事」の定義について明らかにしておく必要がありますね。
「安泰な仕事」とは、一般的に「将来性のある仕事」と同じ意味です。
そして、将来性がある仕事の定義は諸説ありますが、共通してあげられる条件は次の4つです。
- 社会・市場の構造変化に強い
- 社会にとって必要不可欠
- 安定した成長が見込める
- テクノロジーによって代替不可能
この記事では、この4つの条件にしたがって、僕自身の体験を踏まえながら、公務員が本当に将来安泰なのかについて解説してゆきます。
ちなみに、公務員が現時点で安定している職業かどうかについては別記事で詳しく解説していますので、参考にしていただければと思います。
「公務員」という業界は今後も安泰なのか?
公務員は社会・市場の構造変化に強いのか?
たとえ現在の業績が好調であっても、社会や市場の構造変化のあおりを受けやすければ、安泰な仕事とはいえません。
1つの産業分野に特化している企業は、社会・市場の構造変化に弱いといえるでしょう。

そういう意味でいうと、公務員はとても構造変化に強い職種と言えます。
なぜなら、公務員の仕事、すなわち、行政課題に対する解決ニーズは、社会や市場が変化し続ける限り無限に生まれるからです。

むしろ、昔よりも社会や市場の変化スピードは上がっているので、行政の役割は増えてきています。
つまり、
- 社会・市場のニーズの変化 →
- 民間の新規サービスが自然発生的に誕生 →
- 市場メカニズムでは解決できない新たな問題の発生(行政課題)
または、
- 社会・市場のニーズの変化 →
- 民間企業では解決できない新たな問題の発生(行政課題)→
- 新しい民間のサービスが誕生
という流れで、公務員の仕事は生まれるのです。
「行政課題」とは、
カジノ誘致による環境破壊やギャンブル依存の問題
過度な住宅建設による将来的な放置空き家の問題
民泊の普及による宿泊者の騒音やゴミ出しマナーの問題
などの、民間企業が自発的に解決できない問題のことです。
これらを行政が直接解決したり、利益誘導によって民間企業に解決してもらったりするのです。
世の中の変化によって次から次へと仕事が生まれるという意味で、公務員はとても構造変化に強い安泰な職業と言えるでしょう。
公務員は「社会にとって必要不可欠な仕事」なのか?
社会にとって必要不可欠かどうかということも安泰な仕事の条件です。
社会にとっての必要性が低いと、突発的な不況の影響をモロに受けやすいからです。

もちろん、これらの産業がいらないというわけではないのですが、究極のところなくても死ぬわけではありません。
結局、社会にとって必要性がない産業から潰れていくのです。
その点、公務員の仕事は社会に必要不可欠といえます。
なぜなら、人間のコミュニティがある限り、市場メカニズムで解決できない問題が必ず存在するからなのです。
行政の目的は、
民間企業が参入しない(できない)けど、社会に必要不可欠なサービスを提供すること
です。
行政の活動が
- 利益を生むことがない
- 利益を目的としていない
といわれるのは、このように民間企業との棲み分けをしているためです。
もちろん、民間との棲み分けはあくまでも理屈上の話で、100%社会に不可欠なものばかりとは思いません。たまに「この事業ミスってんなぁ」というものも、少なからずあります。
しかし、少なくとも
- 上下水道
- ゴミ処理
- 子育て
- 治安維持
- 国防・外交
などのについては、間違いなく社会にとって必要不可欠な行政サービスと言えるでしょう。
市場メカニズムによって解決不可能な課題があり続けるかぎり、公務員は社会にとって必要不可欠な存在といえるのです。
公務員は「安定した成長の見込める」仕事なのか?
公務員という仕事自体は、安定した成長が見込めると言えるでしょう。
先述したとおり、行政は究極の「何でもやさん」だからです。
社会が多様化していく中で、ますます公務員の仕事は増え続ける一方です。
しかしながら、安定成長は公務員個人にとって恩恵があるものではありません。
つまり、
仕事は増え続けても、それに伴って大幅に給料が増えるわけではない
のです。
なぜなら、社会構造が目まぐるしく変化していっても、国内市場の伸びは低いままだからです。
よく知られているとおり、公務員の給料は民間企業の所得を基準に決められます。

民間企業のように、利益の拡大によって給料が増えるわけではありません。
国内市場の成長率が低ければ、インフレの影響によって、公務員の給料は相対的に下がっていくでしょう。その他多くの民間企業と一緒に。
民間企業と違い、公務員にとっては、必ずしも「安定成長=安泰」ではないのです。
もちろん、不況などによって、公務員の給料が急激にガクンと下がることはありません。
しかし、業務は増え続ける一方で実質的な給料が少しづつ下がり続けるリスクは十分にあるのです。
こういう意味では、公務員は「安泰な」仕事とは言えないでしょう。
公務員の仕事はテクノロジーによって代替されるのか?
簡単にテクノロジーに代替されるようであれば、将来安泰な仕事とは言えません。
この点、公務員は安泰と言っても差し支えないでしょう。
「公務員とテクノロジー」という論点で最近よく話題にあがるのは、
公務員の仕事がAIに奪われるのか?
ということです。
AI化によって、近い将来公務員の大規模リストラが起こる
ほとんどの業務がAIによって代替できるため公務員は不要
なんてことがよく言われていますよね。
これについて、僕は「AIによって公務員の仕事を奪われることはない」と考えています。
その理由を一言でいうと、
当事者である公務員にとってAI化する強い動機がないから
です。
つまり、
すべてAI化できるほど行政の仕事は単純業務ばかりではない
あえてAI化しなくても組織がなくなるリスクが極めて低い
という理由で、公務員のAI化は進みにくいと考えられるのです。

民間企業のように、厳しい生存競争を強いられていないため、地方自治体が根本的にAI化するとは考えにくいのです。
まとめ
今回は、公務員がこれからも「安泰な仕事」だと言える理由について解説しました。
この記事のまとめ
公務員は次の理由から将来安泰な仕事と言える。
- 社会や市場の構造が変わり続けるかぎり、必ず行政でしか解決できない問題が生じるため、公務員の仕事は決してなくならない。
- 効率化を急がなくても組織が潰れないなどの理由から、公務員の仕事のテクノロジー化は進みにくい。
公務員の仕事自体はなくならないものの、収入が先細りするリスクがあるため、安泰であるものののオイシい仕事とは言えなくなるかもしれない。