

今回は、現役の地方公務員がこのような疑問に回答します。
この記事の内容
地方公務員の仕事が楽かどうかを決める3つの要素
世間から「地方公務員は楽ちん」と思われてしまう理由
県庁と市役所では、どちらが楽なのか?
この記事の執筆者
勤務歴5年以上の現役の地方公務員
残念ながら「楽」と言われる部署での勤務経験はなし
結論をいうと、
地方公務員が楽かどうかは人によります。
さらにいうと、
「楽な人」と「忙しい人」が完全に二極化
しています。
そして、地方公務員なら、だれしもが「ついこの前まで楽だったのに、異動や昇格のタイミングで楽じゃなくなる」ということを経験するのです。
地方公務員が楽かどうかを決める3つの要素
では、「楽な人」と「忙しい人」とを分けるものは何でしょうか?
僕は、地方公務員が楽できるかどうかは
- 部署
- 役職
- 業務内容
の3つの要素によって決まると考えています。
順番に説明してゆきます。
要素①部署
まず、部署によって楽ができるかどうか大きく変わります。

一般論として、まず、本庁と出先だと、出先の方が楽です。
それから、本庁の中では、中枢系の部署よりも事業系の部署の方が一般的に楽です。
- 財政課
- 人事課
- 秘書課
などの本庁の中枢にある部署は、どこの県庁でも出世コースであると同時にかなりの激務を強いられます。
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そして、だれしもジョブ・ローテーションによって楽ではないポジションになる可能性があるのです。
地方公務員のジョブ・ローテーションとは
- 定期的に部署を異動する慣行
- 異動のスパンは、自治体によって異なり、2〜3年というところもあれば、3〜5年おきというところもある
オレ、この2年は罰ゲームだと思ってるから
これは、とある激務の部署に異動した僕の先輩が言い放った一言です。
この言葉が象徴するように、地方公務員は人事異動のタイミングで誰もが「貧乏くじ」を引く可能性があるのです。
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地方公務員は、定期的に楽な部署とそうでない部署を転々とするのです。
要素②業務内容
楽な部署に異動できたとしても安心できません。
どんなに楽と言われる部署でも、業務内容によってはまったく楽ではない
ということが起こります。
たとえば、どんなに楽な部署でも
課内の総務業務をとり仕切る代表係
課の一番の目玉政策を所管している係
などに属する職員は、決して楽ではありません。
特に人事・予算・決算・議会など、課内全体のオペレーションを統括している代表係は、他の係が忙しくなると、それにつられて残業も増えるという、かなり辛いポジションにあります。
結局、楽かどうかは基本的には部署によるものの、それだけではないということです。
出世コースの部署は例外なく激務で、それ以外は大したことはない
みたいなことがネットの世界でよく言われていますが、現実はそんなに単純ではありません。
そこまで忙しくない部署でも業務内容によって、楽な人とそうじゃない人が出てきてしまうのです。
同じ課の中でも、
ある係は毎晩夜遅くまで残業
別の係は毎日ほぼ定時で退庁
今ではすっかり見慣れてしまったこの光景にも、県庁に入ったばかりのときにはものすごい違和感を覚えたものです。
こういうことは、地方公務員の世界ではわりと当たり前なのです。
要素③役職
地方公務員が楽できるかどうかは役職によっても変わります。
当然、管理職員よりも一般職員の方が楽なのは言うまでもありません。
部下がメンタルに不調をきたして休職になった
出来の悪い部下が予定通り仕事を進めていなかった
このようなとき、仕事の穴を埋めるのは、管理職の仕事です。
そして、マネジメントによって解決しないときは、管理職員自らが業務をこなす必要があります。

このようなとき、僕の上司だった人たちは自ら部下の仕事をこなすことがよくありました。
自分の上司が大変そうにしているのを目の当たりにすると、出世したいという気持ちが本当になくなりますよ。
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どんなに楽な部署でも、「管理職員だけは大変」ということはよくあるのです。
なぜ「地方公務員は楽ちん」というイメージが定着しているのか?
これまで説明したように、地方公務員のリアルな職場は、楽な人とそうでない人が二極化しています。
それにもかかわらず、世間からはなぜ「地方公務員は楽ちん」みないなイメージを持たれてしまうのでしょうか?
これには
- 市民と接する公務員にかぎって楽そうに見える
- 「安定」と「楽」が混同されている
という2つの大きな理由があると僕は考えています。
市民と接する公務員にかぎって楽そうに見える
県庁では、本庁よりも出先の方が楽なのですが、よりによって、
- 電話対応
- 窓口対応
- 検査業務
- 地域イベントの開催
など市民と直接接するのは主に出先の仕事です。
言い方は悪いですが、楽な仕事ばかりしているため、出先の職員は身のこなし方・話し方が非常にユルいです。
本庁で使いものにならない無能な年配職員が寄せ集められていることも、ユルみきった空気感に拍車をかけています。
このような職員が、市民の目に映ると
あー、やっぱり地方公務員って楽なんだな
ってなってしまうのですね。
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僕自身、出先の職員はホントに楽だなと実感しています。
タスクマネジメントが出来ない(優先度関係なく、お願いされた順番でしか仕事をこなせない)
たいして意味のない作業に時間を掛けすぎる(仕事にムダな付加価値をつけようとする)
業務マニュアルを読めば解決するようなことを、五月雨式で質問してくる
と出先の職員と関わるたびに、「島時間」のようなゆったりとした時間の流れを感じます。
また、とある事業の打ち合わせで出先によく出向いていたころ、定時から10分もしないうちに部屋の照明を消されたのには驚きました。
定時プラス30分〜1時間のサービス残業が当たり前の本庁の職員として、このことはかなりのカルチャーショックでした。
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もちろん、出先のすべての部署が楽というわけではありません。
- 総務
- 企画
など、出先にも例外的に忙しい部署もあります。新たに係長や課長補佐に昇格する人が、本庁の空きポストがないときなどに一時的に異動する出世ポストです。
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しかし、これらの部署の業務は組織全体のオペレーションがメインで、市民と直接やりとりすることはほとんどないのです。
出先の公務員が楽と思われることは仕方ありません。しかし、本庁の忙しい部署の職員も含めて「地方公務員は楽」と決めつけられるのは、なかなか心外なことです。
「安定」と「楽」とを混同している
公務員は安定しているから楽なんでしょ?
という勘違いが非常に多いです。
世間では「安定」と「楽」という要素を混同している人が実に多いのです。

そもそも、「安定した仕事」と「楽な仕事」とは定義が異なります。
「安定した仕事」とは、
- 収入が安定している
- ワークライフバランスが実現できる
- 会社の経営が安定している
- リストラがない
- 転職しやすい
の条件を満たす仕事のことと一般的に言われています。
一方、「楽な仕事」とは
- 業務内容が楽(ルーティン・ニュアル化など)
- 精神的に楽(責任・ノルマ・競争などがない)
- 肉体的に楽(デスクワークなど)
- 労働条件が良い(安定した給料・充実した福利厚生など)
など、わりと主観的な要素に左右されます。
つまり、共通する要素はあるものの、決して「安定した仕事」=「楽な仕事」ではないのです。
もちろん、地方公務員は休みも取りやすく、給料も安定的に上がり続けます。
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地方公務員の心にゆとりがあるのはたしかです。こういう意味では、「精神的に楽」かもしれません。
しかし、だからといって決して「業務内容が楽」というわけではないのです。
県庁と市町村役所ではどっちが楽?
地方公務員といっても、
- 県庁
- 県警
- 市役所
- 町村役場
などありますが、特別に楽な組織はあるのでしょうか?
これについては、どこの組織が楽ということはありません。
かつて、市町村からの派遣職員と一緒に仕事をすることがありましたが、話を聞いてみるとどこの自治体もだいたい同じようなものです。
県庁の方がスケールの大きい仕事をしていて、なんとなくエリートっぽいから忙しそう
町村役場だとお茶をしばきながら、たまに窓口対応しているだけだから楽
このような安易なイメージを持っていませんか?
当然、このようなイメージは誤りです。
実際、名前も聞いたことのないような小さな町役場の職員が過労死した、というニュースが毎年後をたちません。
どこの地方自治体でも、楽な職員がいるのと同時にそうでない職員がいるという構造には変わりはないのです。
まとめ
今回は「地方公務員は楽なのか?」というテーマについて、解説しました。
この記事のまとめ
地方公務員は、「楽な人」と「忙しい人」が完全に二極化していて、楽かどうかは
- 部署
- 役職
- 業務内容
の3つの要素によって決まる。
「地方公務員が楽」という世間のイメージは、
- 市民と接する公務員にかぎって楽そうに見える
- 「安定」と「楽」が混同されている
という2つに事実によって生み出される。
「楽な人」と「忙しい人」が二極化しているのはどこの自治体も同じで、県庁だろうと町役場だろうと、特別に楽な組織というものはない。