

この記事では、このような疑問に現役公務員がお答えします。
この記事の内容
公務員の仕事がつまらない本当の原因
仕事がつまらないにもかかわらず公務員を続ける理由
この記事の執筆者
キャリア5年以上の現役公務員
公務員の仕事をつまらないものにする3つの原因
公務員の仕事がつまらないのは、
- 「結果」よりも「過程」が重視される風潮
- 議会という存在
- デカすぎる組織
の3つの原因があると、僕は考えています。
原因①「結果」よりも「過程」が重視される風潮
県庁を初めとして行政組織の仕事の性質として、「結果」よりも「過程」が重視される風潮があります。
なぜ、行政の仕事では、「過程」や「手段」の方が重視されるかというと、
成果指標がない、あるいは、成果が分かりにくい
からです。
成果がわかりにくい、というかほとんどわからないため、
結果に至るまでの過程が適切かどうかということに仕事のパフォーマンスを求めようとするのですね。
民間企業であれば、「利益」や「売上」といった数値化された成果指標があります。
それに対して、行政の場合、そもそも市場メカニズムで解決できない問題を扱っているため「利益」という概念になじまないのです。
「過程」や「手段」が重視されることによって、
理屈整理のためのムダな仕事ばかりが増える
という弊害が生じます。
理屈整理のためのムダな仕事の具体例は、
- 事業実施に関する幹部職員へのレクチャー
- レクチャーのための説明資料の作成
といったものです。
しかも、幹部職員のレクチャーや資料作成は一筋縄ではいきません。
課長→次長→部長→副知事→知事とステップアップするにつれて、何度も資料を作り直さないといけないということがほとんどなのです。
課長の段階で固まった方針が、部長の指示で覆され、新しく資料を作り直して副知事に持っていったら、結局、もとの課長案に戻った
非常に愚かしいことですが、僕の働いている県庁ではこのようなことが日常茶飯事なのです。
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民間企業であれば、数値化された成果指標があるため、過去に「売上」「利益」をあげた社員の声に耳を傾けることもできるでしょう。
行政の場合、こうはなりません。
理屈整理の場合、たとえどんな結論であっても、それなりのロジック付けをすれば、もっともらしく聞こえるものです。
つまり、一見「客観的」だけど、じつはとても「主観的」な世界なのです。

どちらが本当に正しいか証明できないので、ただただトップダウンの原則に従うしかないのです。
だから、
- 課長と部長の主張が違えば、部長案で資料を作り直さないといけないし
- 副知事・知事がまた違うことを言ったら、また新しく資料を作って報告のレクチャーを課長と部長にしないといけない
のです。
このように、公務員の仕事はわけのわからない理屈付けばかりを延々と繰り返すだけで、つまらないのです。
原因②議会という存在
「議会」の存在によって、公務員の仕事はつまらないものになります。

なぜ、「議会」があることによって、公務員の仕事がつまらないものになるかというと、
「答弁調整」という悪しき慣習があるから
です。
「答弁調整(とうべんちょうせい)」とは
「議会」をプロレスに例えると、プロレスのリハーサルに当たる作業が、「答弁調整」です。
議会では、議員の「質問」に対して、公務員(執行部)が「答弁」するという流れになっていますが、
ぶっつけ本番でガチンコ勝負するわけではなく、お互いが怪我しないように、あらかじめ相手に攻撃の手の内を明かすのです。
しかし、「答弁調整」といっても、単に答弁の方向性を議員とすり合わせるだけではありません。
現実は、
- 語尾の言い回し
- 用語の使い方
など細かいところの調整がほとんどなのです。
当然、このような細かい調整にたくさんの幹部職員や議員が関わると、資料作成の作業量は膨大になりますね。

こうして、事務方の職員は、何度もリハーサル用の答弁書を作り直すことになるのです。
しかも、中には「自分で質問を作れない議員」というのもいるので、同時並行で、議員側の「質問趣旨」も作ってあげないといけないのです。
それから、会期中の議会対応だけではありません。
各政党との意見交換会
政党からの知事へ提出された要望書への対応
個別の地方議員からの資料要求
など、議会制民主主義というタテマエのもと、ムダな関連業務にも付き合わされることになるのです。
「議会」という存在は、組織の中枢から末端まで、公務員の仕事にかなり大きな影響を与えています。
公務員であるかぎり、つまらない議会の仕事からは逃げられないのです。
原因③デカすぎる組織
組織がデカすぎるということも、公務員の仕事をつまらないものにする原因の1つです。
なぜ、組織がデカすぎることで仕事がつまらなくなるかというと、
- 事務が細分化されすぎる
- 内部管理業務のウエイトが増す
という2つの理由によります。
まず、組織がデカすぎると、事業の細分化が起こります。
これによって、自分のしていることがどの事業のどの部分を担っているのかわかりにくくなるのです。

たとえ、華々しいイベント事業を所管する部署であっても同じです。
部署全体で見ると華やかに見えても、
幹部職員の行程表の作成
出張旅費の支出決定書の作成
知事のスピーチ原稿を秘書課に提出
など、個々の職員がしている業務は、意外に地味で単調なのです。
それから、内部管理業務のウエイトが増すことで、組織の維持だけを目的にしたつまらない仕事に当たる確率が増えてしまいますね。
組織がデカすぎることによって、公務員の仕事はつまらないものになってしまうのです。
【体験談】仕事がつまらないのに公務員を続ける理由
それでは、仕事がつまらないのにもかかわらず、なぜ公務員を続けるのでしょうか?
僕がなぜ公務員を続けているかというと
- 「仕事がつまらない」というデメリットをカバーできるだけのメリットがある
- 公務員を辞めることによるデメリットが大きい
という2つの理由によります。
「仕事がつまらない」というデメリットをカバーできるだけのメリットがある
僕だけではなく、多くの人が公務員を続けているのも、おそらくこの理由が大きのではないでしょうか?
公務員のメリットとしては、
- 給料・身分が安定している
- 休みが取りやすい
- 競争によるストレスがほぼない
- 地方都市で豊かに暮らせる
といったことが個人的には大きいと考えています。
僕個人は民間企業で働いたことはありませんが、民間企業で働いている妻と「待遇」についての話をするたびに、いかに公務員が恵まれているか実感しています。
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もちろん、仕事がつまらないだけではなく、
楽な仕事ばかりではない
出世するメリットがない
バッシングの対象になりやすい
といったデメリットも公務員にはあります。
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しかし、こういったデメリットをすべてひっくるめても、僕にとっては公務員であることのメリットのほうが上回っているのです。
公務員を辞めることによるデメリットが大きい
個人的には、公務員を辞めることによって
- 20代後半で初めて就職したことによる問題が表面化する
- 地方都市で豊かに暮らすための他の手段が見つからない
というデメリットがあります。
1つ目は、公務員を辞めることによって、20代後半で初めて就職したことによる問題が表面化する、ということです。
大学時代に「空白期間」の多かった僕にとっては、地方公務員が最適な就職先でした。
人よりも遅く就職することによるデメリットは、年功序列の公務員という組織の中では薄まります。
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しかし、もし民間企業への転職を考えたらどうでしょうか?
人よりも遅く就職したということは、つまり、年齢のわりに勤続年数が短いということになります。
これは、民間企業に転職において不利に働き、かなりの確率で待遇が悪くなることでしょう。

そう考えると、公務員であり続けるのが、最も現実的なのです。
2つ目は、地方都市で豊かに暮らせる他の手段が見つからないということです。
「大都市」と「ド田舎」の両方の良いところをミックスした地方都市は、僕にとってはまさに「地上の楽園」です。
他人との距離や都市の規模感がちょうどいい
自然が豊かで通勤のストレスも少なく、生活の質が高い
生活コストが低く、ご当地グルメ・食材を安く楽しめる
など一見すると、地方都市で暮らすことのデメリットは思いつきません。
しかし、じつは
安定した雇用が少ない
賃金が低い
というデメリットがあります。
もし、地方公務員を辞めた場合、地方都市にとどまり続ける限りは今の生活水準を下げざるをえなくなるでしょう。
かといって、首都圏に生活拠点を移すという選択肢も現実的ではありません。
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一番大きい理由は、今住んでいる地方都市で、すでに生活基盤が出来上がってしまったからです。
もちろん、、地方都市の過ごしやすさというものを知ってしまったため、首都圏で生活したくないという理由もあります。
しかし、それよりも、
- 妻の勤務先
- 子供の保育園
- かかりつけの病院
これらを、またゼロから構築する手間の方がしんどいのです。
このようなコストを考えたら、地方公務員として地方都市にとどまり続けるという選択肢が最も合理的なのです。
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まとめ
今回は、「公務員の仕事はなぜつまらないのか」というテーマについて、解説しました。
この記事のまとめ
公務員の仕事がつまらない根本的な原因は次の3つ。
- 「結果」よりも「過程」が重視される風潮
- 議会という存在
- デカすぎる組織
仕事がつまらないにもかかわらず、僕が公務員を続けている理由は次の2つ。
- 「仕事がつまらない」というデメリットをカバーできるだけのメリットがある
- 公務員を辞めることによるデメリットが大きい