

この記事では、現役の県庁職員が、このような疑問に対して回答します。
この記事の内容
「県庁職員は転勤が多い」についての真相
転勤が多い県庁職員の特徴
県庁職員の主な転勤先
この記事の執筆者
キャリア5年以上の現役県庁職員
採用区分は一般行政職(行政事務)
転勤の経験はない
やはり県庁は転勤が多いのか?
まず、
そもそも県庁職員は転勤が多いのか?
という疑問に回答します。
これについては、間違いなく県庁職員は転勤が多いと言えるでしょう。
都道府県の広さと転勤の多さの関係
数ある地方公務員のなかでも、なぜ県庁職員が転勤が多いかというと、単純に市町村と比べて県の面積が大きいからです。
県庁職員に限らず、地方公務員は長いキャリアスパンの中で、必ず本庁と出先の間の異動を経験します。
県庁が市役所と違うのは、単に本庁と出先が離れているということです。

つまり、出先への異動となると、引越しを伴うことがほとんどなのです。
一方、市町村の場合、出先機関に異動になったところで、市町村をまたぐわけではありません。
今住んでいるところから転居することなく、通えてしまうのですね。
だから、逆に言えば、県庁職員であっても、
- 面積が小さい(端から端までの移動距離が短い)県
- 各出先機関が県庁所在地からアクセスしやすい県
であれば、転勤する必要は生じないかもしれません。
このような事情から、同じ地方公務員でも、市町村職員に比べて県庁職員の方が転勤が多くなってしまうのです。
同じ県庁職員でも、転勤の多さに差がある
たしかに、組織単位で比べると、市町村よりも県庁のほうが転勤が多いのは間違いないでしょう。
ただし、「県庁職員は転勤が多い」というのはあくまでも一般論です。
個別具体的な話をすると、転勤が多いかどうかは人によって違ってくるのです。
つまり、同じ県庁の職員でも、
ほとんど転勤しない人
1〜2年おきに頻繁に転勤する人
とで2極化している、といった印象です。
転勤が多い県庁職員にみられる3つのパターン
では、なぜ同じ県庁職員でも
転勤が多い人
転勤が少ない人
に分かれるのでしょうか?
残念ながら、今のところ、これに対する明確な理由はわかりません。
しかし、これまでの僕の経験上、転勤が多い県庁職員には、ある共通するパターンがあるように感じます。
そのパターンとは、
- 独身の職員
- 若手職員
- 人事異動に対して文句を言わない職員
の3つがあります。
順番に説明します。
独身の職員
独身の職員
あるいは、結婚していても
子供がいない夫婦二人暮らしの職員
などは、転勤が多い県庁職員の典型的パターンです。
独身だと、フットワークが軽く、転勤による負担が少ないものとして扱われるのです。

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一方、子持ち世帯が転勤するとなると、
- 妻(夫)の勤務先
- 子供の学校(幼稚園)
などの生活基盤を転勤先で新しく固めないといけません。
それが不可能だと、最悪、単身赴任という形になってしまいます。

そのため、転勤は子持ち世帯にとっては大きな不利益になります。
このことは、当然、人事異動においても配慮されます。
その結果、子持ちの世帯よりも、独身の職員の方が「転勤」の対象者になりやすくなるのです。
若手職員
若手職員も、転勤が多い傾向にあります。
理由としては、もちろん若手職員の方が独身率が高いということもあります。
しかし、それよりも大きい理由として、若いうちに「県庁職員としての職務適正」を試すということが考えられます。
「県庁職員としての職務適正」とは、短いスパンでの転勤に耐えられるかどうかということです。

しかも、幹部になればなるほど、配置されるポストはタイトになっていきます。
つまり、空きポストに配置されるために、1〜2年の短いスパンで東から西への異動を余儀なくされることが多くなるのです。
将来の幹部育成を視野に入れている
若手職員が本庁と出先を短いスパンで異動させられているのをみると、どうしても僕はこのように思ってしまいます。
いずれにしても、僕の勤めている県庁では、若手職員はわりと転勤が多い傾向にあります。
人事異動に対して文句を言わない職員
結婚して家族の生活圏が固まっている職員
中堅職員
このような職員であっても、必ずしも転勤がないわけではありません。
個人の性格によっても、当然、転勤の多さに影響が出てきます。
そして、一番手頃な転勤のコマとして使われやすいのは、人事異動に対して文句を言わない職員です。
仕事ができない無能にかぎって、権利意識だけは強い傾向にあります。
- 子供を転校させたくない
- 家族と離れて暮らしたくない
など、なにかと難癖をつけて転勤したがりません。
僕の知っている限りでも、ずっと本庁の部署を転々としている無能な主査がいます。
僕自身もそうなので、あまり偉そうに言えませんが、やはり県庁所在地が一番住心地がよいのです。
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一方、人事異動に対して文句を言わない「良い人」たちは、転勤が多いことを当然のものとして受け入れています。
小さい子供と離れて暮らすことになっても、仕方がないと割り切っているのです。
理不尽ではありますが、このように文句を言わない職員から転勤の対象になりやすいのは、事実としてあるようです。
県庁職員の転勤先にはどのようなものがあるのか?


転勤が多い順にならべると、
- 出先機関
- 市町村
- 東京事務所
- 中央省庁
- 企業派遣
- 他県
- 海外
となります。
順番に説明します。
出先機関
県庁職員の転勤先として一番メジャーなのは、出先機関です。
会社で言うところの「本庁」が「本社」であるのに対して、「出先機関」は県内の営業拠点といったところでしょう。
県庁によっては「支所」「支庁」「振興局」「地域振興局」などと呼ばれています。
定年まで県庁職員として勤めあげる場合、必ず一度は転勤を経験するのが、この出先機関なのです。
市町村
転勤先として「出先」の次に多いのが、県内の各市町村役所への派遣です。
市町村職員が県庁に派遣されるのはよく聞くかもしれませんが、じつは県庁職員が市町村に派遣になることもよくあるのです。
場所によっては、同じ地域に出先があるにもかかわらず、あえて市町村派遣になるということもあります。
もしかしたら、
- それぞれの自治体が抱える課題
- 各自治体ごとの仕事ぶり
といったものを、県庁職員として生で体験させるという意味合いがあるのかもしれません。
県庁によっては、離島や山間部など生活が困難な地域に派遣になることもあります。
東京事務所
出先や市町村派遣に次いで多いのは、東京事務所への転勤です。
地方に本社を置く企業に例えると、
- 「出先機関」が県内の営業拠点
- 「東京事務所」は「東京支店」
といったところでしょうか。
ほぼすべての道府県の東京事務所は、永田町にある「都道府県会館」というビルの各フロアに集約されています。
県庁によっては、大阪・名古屋・福岡などの大都市部にも事務所を構えているところもあります。
転職することなく首都圏やその他の大都市圏での生活を体験できるということから、県庁職員のあいだでは密かに人気の転勤先となっています。
中央省庁
中央省庁へは、ごく少数の県庁職員しか派遣されません。
この後説明する「企業派遣」もそうですが、基本的によそに出しても恥ずかしくない職員を厳選しているのです。
そのため、県庁職員として中央省庁へ派遣されたら、まず出世コースにのったと考えて間違いないでしょう。
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中央省庁への派遣のタイミングとしては、たいてい「主査」や「課長補佐」への昇格する時が多いのです。
企業派遣
中央省庁と同じく、民間企業へはごく少数の県庁職員しか派遣されません。
中央省庁へは、わりと中堅職員が多く派遣されるのに対して、民間企業は若手職員が多く派遣されるといったイメージです。
たいていは県内に拠点を置く地方企業への派遣がほとんどですが、まれに東京に本社を置く大企業に派遣になることもあります。
他県
ごくまれに、他の都道府県庁に派遣されることもあります。
これは、市町村への派遣と同じく、自治法派遣の一環として行われるものです。
自治法派遣(じちほうはけん)とは?
- 「普通地方公共団体相互間の協力援助に関する措置」を定めた、自治法第252条の17にもとづいて行われる、自治体間の派遣。
- 大規模災害時などの支援などもこれに含まれる。
海外
他の都道府県への転勤よりもさらにレアケースですが、海外転勤というのもあります。
最もメジャーな海外転勤のパターンは、各都道府県の海外事務所に赴任することです。

それ以外にも、ごくわずかですが、
- 海外の大学院に留学
- 民間企業派遣の一環として派遣先企業の海外支所に勤務
というパターンもあります。
いずれにしても、県庁職員が海外転勤になるのは非常にレアと考えて間違いないでしょう。
まとめ
今回は、「県庁職員の転勤」というテーマについて解説しました。
この記事のまとめ
県庁職員は、数ある地方公務員の中でも、転勤が多い職業といえる。
同じ県庁の職員でも、転勤の多さには差があり、
- 独身の職員
- 若手職員
- 人事異動に文句を言わない職員
などは転勤が多い県庁職員の典型である。
県庁職員の転勤先としては主に次の7つがある。
- 出先機関
- 市町村
- 東京事務所
- 中央省庁
- 企業派遣
- 他県
- 海外