

このような疑問をお持ちではないでしょうか?
この記事では、「公務員の出向」に関するあらゆる疑問について、現役地方公務員が回答します。
この記事で解決する疑問
地方公務員の出向先はどのようなところがあるのか?
地方公務員の出向は「出世」OR「左遷」?
地方公務員が出向するメリット・デメリットは?
地方公務員が出向したときの身分・給料・手当はどうなるの?
この記事の執筆者
キャリア5年以上の現役地方公務員
県庁に出向してきた市町村職員と同じ部署で勤務経験あり
国に出向していた県庁職員と同じ部署で勤務経験あり
出向とは?
民間企業における出向とは、業務命令によって社員を子会社や関連会社に異動させ、就労させること。
出向には、在籍出向と移籍出向の2つがある。
- 在籍出向 社員との雇用契約を維持したまま出向すること
- 移籍出向 雇用契約まで解消して転籍を行うこと
地方公務員の出向先はどのようなところがある?

地方公務員と言っても、
- 市町村職員
- 都道府県庁職員
の2つがあります。
市町村職員と都道府県庁職員とでは出向先も微妙に違うため、それぞれに分けて説明したいと思います。
市町村職員のケース
まず、市町村職員の出向について説明したいと思います。
市町村は転勤がないから、地元から出たくない人にはオススメ
なんてことがよく言われていますが、これは誤りです。
市町村職員であっても、出向によって転勤になる可能性は十分にあるのです。
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【現役地方公務員が解説】地方公務員はどれくらい転勤が多いのか?転勤先はどのようなものがあるのか?
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市町村職員の出向先としては、
- 都道府県庁
- 国(中央省庁・出先機関)
- 民間企業(?)
があります。

出向先によっても変わりますが、出向期間は2年ほどです。
少なくとも、僕の働いている県庁に出向してきた市町村職員の方は、きっちり2年でもとの市町村へ戻られていました。
都道府県庁
市町村職員の出向先としてもっともメジャーなのは、都道府県庁です。
つまり、それぞれの市町村が属しているエリアの都道府県に出向になる、というパターンですね。

総務課に異動してからも、部内の人事配置をみると、やはり一定の割合で市町村から出向してきた方がいることがわかりました。
都道府県と市町村の人事交流は、かなりの割合で行われていると考えて間違いないでしょう。
国(中央省庁・出先機関)
それから、国に出向になる市町村職員もいるようです。
国と言っても、
中央省庁(本省・霞ヶ関)
出先機関(地方支分部局)
があります。
そして、どちらに派遣になるかは、市町村によって異なります。
通常、
- 政令指定都市の職員は中央省庁に出向
- それ以外の市町村の職員は出先機関に出向
になるようです。
なぜ、このようになるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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【現役公務員談】「100%転勤なし」の公務員はないけど「転勤が少ない」公務員ならある!転勤が少ない組織を見分ける2つのポイント
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かつて、某省庁の出先機関と仕事上のやり取りをすることがあったのですが、その時窓口となっていたのは、市町村から出向していた方でした。
都道府県庁への出向ほどでありませんが、市町村から国に出向になることもそれなりにあるようです。
民間企業(?)
実際に見たことはありませんが、市町村から民間企業に出向になる人もいるでしょう。
これは、僕の推測ですが、県庁から民間企業に出向になっている職員がいるため、市町村から民間企業に出向になっているケースも当然あると考えられます。
県庁職員のケース
次に、都道府県庁職員の出向について説明します。
県庁職員の主な出向先としては、
- 中央省庁(霞ヶ関)
- 市町村役所
- 他の都道府県庁
- 民間企業
の4つがあります。
県庁職員の出向先については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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現役県庁職員が県庁の転勤事情を完全解説します!主な転勤先・転勤が多い職員のタイプは?
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県庁職員が出向するときの派遣期間は、2年ほどです。
民間企業については、1年というケースもあります。
- 中央省庁や首都圏の民間企業
- 県庁所在都市から離れた市町村
など、出向に伴って転勤になるケースがほとんどだと考えて間違いないでしょう。
地方公務員の出向は「出世(栄転)」OR「左遷」?

現役公務員の立場から言わせてもらうと、なぜこのような疑問がそもそも出てくるのかよくわかりません。
もしかしたら、民間企業の左遷人事をそのまま公務員のケースにも当てはめて考えているのかもしれません。
公務員にとって「出向=左遷」はありえない
まず結論をいうと、
地方公務員にとって、出向は左遷ではありません。
少なくとも「出世」の要素はあっても、「左遷」の要素はまったくないと言えるでしょう。
なぜなら、組織を代表する優秀な職員だけが出向の対象になるからです。つまり、組織として、よその組織に出しても恥ずかしくない人を選ぶのですね。
「左遷」の対象になるような職員を派遣するなんて、まるで、
うちの県庁(市役所)は彼(彼女)のような無能ばかりです
と言っているようなものですよね。
しかも、単なる組織としての威信・プライド・体面といった理由だけではありません。
人事交流、つまり、自分の組織の職員を他の組織に派遣することの本来の目的は、
組織間の太いパイプをつくること
組織間の連携を円滑にすること
ですよね。
もし、派遣した職員が出向先で問題行動を起こしてしまったら、どうなるでしょうか?
人事交流の本来の目的を損ないかねません。

そういう人的なリスクの点からも、優秀な職員を選んで他の組織に出向させるのは、自然な流れと言えるでしょう。
「出世コースの出向」かどうかは出向先による
地方公務員にとっての出向は左遷ではない
ということをお伝えしましたが、それでは、「出向=出世」なのでしょうか?
これについては、
出世コースかどうかは、出向先による
というのが正直なところです。
あくまでも、県庁職員のケースですが、
中央省庁(霞ヶ関)への出向については、間違いなく出世コース
と言えるでしょう。
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現役地方公務員が考える出世コースとは?代表的なキャリアパスを紹介するよ
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中央省庁への出向が出世コースだと言える根拠としては、国に出向になるタイミングで「係長」や「課長補佐」に昇格するからです。
しかも、国に出向する職員のほとんどは、県庁の本庁内部で昇格するよりも、かなり若い年齢で昇格しているのです。
「中央省庁」以外はそれほど出世コースではない
一方で、
- 他の都道府県庁
- 県内の市町村
- 民間企業
これらの組織への出向は、それほど「出世コース」ではありません。
経験上、
純粋な人事交流
という意味あいが強いように感じます。
ただし、出向先がどこであっても出向の対象になるということは、それだけ組織に買われている存在であると言えるでしょう。
もちろん、民間企業や市町村への出向によって、すぐに昇格するわけではありません。
それでも、
将来的に出世する潜在的可能性は高い
のは間違いないでしょう。
実際に僕の周りでも、出世コースを歩んでいる人の中には、過去に民間企業派遣を経験している人が結構いたりします。
地方公務員が出向するメリット・デメリットは?
実際に、出向を経験した県庁職員や県庁に出向してきた市町村職員から聞き取った内容をもとに、地方公務員が出向するメリット・デメリットについてまとめてみました。
メリット
まず、出向のメリットとしては、
自分の仕事のやり方を相対化できる
ということがあげられます。
地方自治体の場合、組織ごとの閉鎖性が高いため、同じ「お役所」でも案外、仕事のやり方が全然違ったりするものです。
今まで絶対視していた仕事のやり方が、じつは自分の県庁(市役所)だけでしか通用しない、なんてことがあるかもしれません。
また、そもそも、民間企業だと、
- 仕事のやり方
- 仕事のベクトル
- 仕事の内容
などが、異次元レベルで行政組織と違います。
民間企業へ出向することによって、大きな刺激になるのは間違いないでしょう。
デメリット
逆に、デメリットとしては、
出向中は主体性を持って仕事ができない(持たされない)
という点があげられます。
これは、
外部から派遣されてきた人間は、決して組織の基幹的な業務を任せられない
という理由からです。
このような理由から、出向してきた職員は、当たり障りない仕事しかさせてもらえず、2年ほどの派遣期間を過ごすことになるようです。
いずれ出向元の組織に戻ってしまう職員
将来の幹部候補となるプロパー職員
人材育成コストの観点からも、後者の方に主体性のある重要な業務を与えようとするのは、ごく自然なことかもしれません。
出向したときの給料・手当・身分は?
身分


地方公務員の出向の形態としては、
- 派遣
- 割愛(退職)
の主に2つがあります。
そして、両者の違いは次のようになります。
「派遣 (はけん)」 → 出向元の職員の身分のまま出向すること
「割愛(かつあい)」 → 新たに出向先の職員として出向する
※このブログでもよく「派遣」という言葉を使用していますが、厳密にいうと「(広い意味での)派遣」には、「(狭い意味での)派遣」と「割愛」の2つの意味が含まれていますのでご留意ください。
民間企業に置き換えると、
- 「派遣」=「在籍出向」
- 「割愛」=「移籍出向」
といったところでしょうか。

あくまでも県庁の例ですが、具体的には、
- 中央省庁への出向 → 割愛(出向中は国家公務員になる)
- 市町村や民間企業への出向 → 派遣(県庁職員としての身分のまま)
というふうに、「派遣」と「割愛」の使い分けがなされています。
給料
給料・手当は、原則として出向先の身分・給与ルールにもとづいて、出向先から支払われます。
出向の形態が、「派遣」と「割愛」のどちらであるかにかかわらずです。
ただ、これについては、自治体間や国との取り決めによって様々な形があります。
たとえば、県庁に出向されていた知り合いの市町村職員の中には、
- 給料は所属している組織からでる
- 手当だけは出向先からでる
という人もいました。
色々と大人の事情があるようですね。
いずれにしても、出向元と出向先のどちらが給料・手当を支払う(負担する)のかについては、両者の協議によって柔軟に決めることもできるのです。
手当
残念ながら、出向そのものを要件にした手当は存在しません。
ただし、出向によって転勤になることも多く、
その場合は、
- 単身赴任手当(単身赴任の場合)
- 地域手当(首都圏や県庁所在地に転勤する場合)
などがもらえます。
また、出向のタイミングで管理職員に昇格すれば、当然、管理職手当ももらえます。
出向そのものを要件にした手当はありませんが、出向によって働く場所や身分が変われば、それに対応した手当をもらうことができるのです。
そういう意味では、出向はいろいろな手当をもらえるチャンスと言えるかもしれません。
まとめ
今回は、「地方公務員の出向」というテーマについて、解説しました。
これまで紹介したように、都道府県庁と市町村役所では、出向先や待遇などが微妙に違ってきます。
就職先を選ぶ上で、この記事を参考にしていただければと思います。