
この記事では、現役公務員がこのような疑問にお答えします。

この記事では、
- 部署
- やりたいこと
- 働き方(勤務形態)
- 働く場所
という4つの切り口から、今まで僕が実際に異動希望を出してみた結果にもとづいて解説したいと思います。
この記事で解決する疑問
公務員の異動希望はどれだけ通りやすいのか?
異動希望を通しやすくするためにはどうすればよいのか?
異動希望が叶わなかったときに、どうすべきか?
この記事の執筆者
キャリア5年以上の現役公務員
公務員の出世はとおりやすいのか?4つの切り口から検討
①「部署」をベースにした異動希望
まず、「部署」という観点から、異動希望は通りやすいのかどうか解説します。
残念ながら、部署をベースにした異動希望はほぼ通りません。
「部署」というのは、そこまで切迫した理由でないため、人事異動で考慮されにくいと考えられます。

県庁職員の異動ルートとしては、同じ部(畑)の中をグルグルと回る、というのが一般的です。一部の職員しか、部をまたいで異動しないのです。
たしかに「部署」をベースにした異動希望は通りにくいのですが、もちろん、希望する部署に配属される人もいます。
しかし、経験上、そのような人はまれであって、「部署」をベースにした異動希望はほとんど通らないと考えたほうが良いでしょう。
②「やりたいこと」をベースにした異動希望
「やりたい仕事」をベースにした異動希望も、なかなか採用されにくい
というのが現実です。
「部署」をベースにした人事異動の考慮要素と同じく、あまり重要度が高くないものとして扱われるようです。

ただこれは、あくまでも可能性が低いというだけであって、「やりたい仕事」をベースにした異動希望が全く通らないというわけではないようです。
③「働き方」をベースにした異動希望
では、「働き方」をベースにした異動希望はどうなのでしょうか?
たとえば、
子育てに専念したいから部分休業を取れる環境を希望する
働きながら大学に通いたいため柔軟に休みが取れる環境を希望する
といったケースです。
このような「働き方」を基準にした異動については、経験上、かなり希望がとおりやすいと言えます。
多様な働き方が尊重されるのであれば、積極的に希望を出していくほうが良いでしょう。
④「働く場所」をベースにした異動希望
さいごに、「働く場所」をベースにした異動希望はどうなのでしょうか?
要するに、転勤希望です。
これについては、
ケース・バイ・ケース(場合によっては通りやすく、場合によっては通りにくい)
です。

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具体的にいうと、
「〇〇に転勤したい」はあまり通らない
けど
「〇〇から転勤したくない」はわりと有効
だと考えています。
なぜなら、「〇〇に転勤したい」という理由はそれほど緊急度が高いものではないのに対して、「〇〇から転勤したくない」という理由は家族の事情など考慮されるべきだからです。

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このことからも、今の勤務場所から転勤したくないという希望については、かなり考慮されやすいと考えて問題ないでしょう。
「異動希望」と「出世」は両立不可能?
1つ異動希望を出す上での注意点としては、
異動希望を通すことによって、出世のスピードに影響が出る
ということです。
なぜなら、県庁職員の場合、
必ず一度は昇格のタイミングで転勤(出向)することになるという暗黙のルールがある
からです。
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ずーっと同じ場所にとどまり続ければ、その分当然、出世のスピードに影響が出てくるのですね。
もちろん、多様な働き方が尊重されないわけではありません。
それでもやはり、
一度も転勤を経験したことがない職員
定期的に転勤を繰り返している職員
昇格という点で、両者を平等に扱うのは不公平と考えられるのです。

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つまり、今の勤務場所から転勤したくない(たとえば「県庁所在地から動きたくない」など)という希望をだせば、それだけ出世が遅れてしまうのです。
少し話はそれますが、僕はそれで良いと思います。
なぜなら、出世しなくても年功序列によって毎年かならず昇給するからです。
さらにいえば、公務員にとって出世することなんかに、何のメリットもありませんし。
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【悪用厳禁】異動希望を通しやすくするためのコツ
今までの経験をもとに、県庁や市役所で異動希望を通しやすくするコツについてお伝えしたいと思います。
もしかしたら、ここまでの説明でもうお分かりかもしれませんが、公務員が異動希望を通しやすくするためには、
「③働き方」または「④働く場所」を切り口にした志望動機を練ること
です。
ただし、これには1つ条件があります。
その条件とは、「客観的な理由であること」です。
たとえば、
- 子育て
- 介護
- 学業
などはテッパンの客観的な理由と言えるでしょう。
「家族」という切り札の効果は絶大?
その中でも、特に有効だと考えているのが、「家族」を理由にした異動希望です。
実際、僕自身、「家族」を理由に異動希望を叶えることができました。
厳密に言うと、部署自体は忙しい部署から変わることはなかったのですが、担当業務を軽いものに変えてもらうことによって、育児に専念することができたのです。
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逆にいうと、ただ単に
残業が嫌だから
たくさん有給休暇を取りたいから
といった理由では、希望が通らないのは明らかです。
そのようなホンネの部分をおおい隠す、客観的な理由が必要なのですね。

家族がいる人は積極的に異動希望をだしてみるのが良いでしょう。
【さいごに】異動希望が叶わなくても悲観する必要はない
希望の部署に配属されても手放しに喜べない
そもそも、希望する部署に配属されることは手放しに喜べることなのでしょうか?
これについては、必ずしも手放しに喜べるものとは言い切れません。
なぜなら、
どんな花形部署であっても、必ず地味で単調な業務があるから
必ず誰かが地味な仕事を受け持たないといけないのですが、もしかしたら、それが自分になるかもしれないのです。
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僕が一番最初に配属された部署は、県庁の中でもかなり人気のある事業課でした。
その時の経験をもとにいうと、たとえどんな花形部署であっても、おおかたの仕事は地味で単調な業務なのです。

希望の部署に異動できたからといって安心はできないのが現実です。
公務員の仕事に過度な期待を持ってはいけない
さらにいうと、
公務員の仕事に対して、過度な期待を持ってはいけない
たとえどんなに華々しく見える仕事でも、蓋を開けてみると、地味でつまらない事務作業が多かったりするものです。
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先ほどと同じ例になりますが、僕が県庁で最初に配属された「花形部署」で一番面白そうな事業を担当していた先輩の例があります。
その先輩職員は、とある全国規模のイベント事業を担当していました。そのイベントとは全国から地方自治体、民間企業、それから中央省庁などが集うスケールのものです。
一見、とてもスケールが大きく、やりがいがありそうに聞こえますね。
しかし、じっさいに話を聞いてみると、
- 骨が折れるくらい地道な、外部関係者との調整
- 秘書課(知事)からの細かい指示への対応
など、どれもつまらなそうな作業ばかりでした。
イベント当日が近づくにつれて、その先輩はこのような地味な仕事を毎晩遅くまでしていたのです。
イベント当日は僕も手伝いをさせてもらったのですが、10ラウンド目のボクサーみたいにボロボロになっていた先輩の後ろ姿を、今でもおぼえています。
要するに何が言いたいかというと、県庁だろうが市役所だろうが、
表面的な部署・事業の名前だけを見て、過度に希望を持たないほうがよい
ということです。
他人の芝生は青く見えてしまいがちですが。
逆に言えば、どんなにつまらなく見える仕事でも、それなりにやりがいはあります。
というか、自分なりのやりがいを見い出せれば、どんな仕事でもそれなりに楽しいものになるのです。
たとえ、異動希望が叶わなくても、全く悲観する必要はないのです。